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TEAM SHACHIから受け取った圧倒的な感謝と愛ーー「鯱の大感謝祭」@名古屋・東京公演レポート

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今更ながら、「鯱の大感謝祭」へ@名古屋公演・東京公演に参加した感想などを書いた。
2021年を振り返る良い公演だったよねという話、アコースティック良かったよねという話、「sweet memories」がよかった話など。
本当に2021年はいろいろあったが、それを全て包み込むようないい公演だったと思う。2022年を睨みつつも、そんなライブを振り返っていきたいと思う。

目次

2021年の「アンコール」

「鯱の大感謝祭」は11月13日にZepp Nagoyaで行われた名古屋公演、12月3日にSpotify O-eastで行われた東京公演それぞれ2公演、計4公演行われた。私はこれを、2021年をひとつのライブと見立て、その「アンコール」と位置づけたい。
2021年は、2月の豊洲PIT公演でパシフィコ横浜公演が発表され、パシフィコ横浜をゴールに据えて活動してきた。つまり、勝負の1年であり、一貫して目指すゴールがあった。そして、このパシフィコを終え、一つのピークを迎えた年末、この公演の1曲目は「マジ感謝」だった。この「マジ感謝」はかつてアンコールで披露されることが多く、今これから始まる公演全体がまるでアンコールのようだと感じたのだ。
加えて、アンコールでは公演に対する感謝の気持ちを述べるのが一般的だ。本公演のテーマは「感謝」である。

この二点から私はこの公演を2021年のアンコールと位置づけたのだ。

アンコールといえば、TEAM SHACHIに改名してからは、よりエンタメ性や芸術性を高めた公演を打ち出してきたことも手伝い、かつての定番曲はなかなか出番がなかった。加えて、コロナ禍となってからは完成を待ち続ける「Today」をアンコールの最後に必ず据えてきた。もうこれらは既定路線であり、動かし難いことも理解できる。

そこで往年のアンコールに近い雰囲気で感謝を伝える「鯱の大感謝祭」を行った。これが、かねてから展開してきた「チームしゃちほことTEAM SHACHIは地続きだ」の持論を裏打ちもするのだ。「マジ感謝」以外にも、「大好きっ!」や「でらディスコ」など、久しぶり且つアンコールといったらこれだよ!と唸ってしまうような曲もセッテイングされていた。

これまではひとつひとつの公演で行ってきたことを、年間を通してやってしまうのだから、そのスケールの壮大さに驚くのである。そして、こうすることでこれまでなかなか出番のなかった楽曲たちもすくい上げ、且つ公演のコンセプトを確立することができるのだ。この手腕には恐れ入った。

さらに言えば、東京公演の2部をかつてのポニーピンク・日和ゆずが観覧していた。メンバー全員と楽しそうしている写真をみて、幸せを噛み締めなかった人間がいるだろうか。そんな意味でも、2021年の締めくくりに相応しい「アンコール」だったと思う。

 

繊細なコーラスワークが光るアコースティックパート

今回の目玉は中盤のアコースティックパートだ。浅野尚志をゲストに迎え、ギター・ピアノと1部2部それぞれテイストを変えてアレンジした。
浅野くんが手がける楽曲を本人の演奏によって披露したことも素晴らしかったが、特筆すべきはカバーであろう。阿部真央「I wanna see you」と大塚愛プラネタリウム」がカバーされた。2曲とも恋愛ソングで、わちゃわちゃ・がちゃがちゃが常な彼女たちの普段見せない顔だった。カバーにこの曲を選んだ理由は、会いたくても会えない日々が続いた、その想いを歌にして届けたいと語られている。
特に語りたいのは「プラネタリウム」だ。

なぜ特に「プラネタリウム」を語りたいと思ったのか、それは大黒柚姫のコーラスパートが珠玉であり、彼女の良さを十二分に引き出す素晴らしいものだったからだ。
原曲を聴けばわかるが、「プラネタリウム」はかなり多くのパートにハモリが入る。これをもはや当然と評してもいいだろうか、全て大黒柚姫が担当した。彼女のハモリの良さはこれまで何度も語ってきたが、鯱の大感謝祭における「プラネタリウム」が彼女のハモリの真骨頂だったと私は大声で叫びたい。

柚姫の歌声は非常に繊細だ。それゆえ、かつては賑やかな曲が多い持ち歌の中では目立つことが少なかった。しかし、ハモリという役割を得てからは、この歌声が注目されるようになった。
そして、このカバーを聴いて、柚姫のポテンシャルはこんなものではないと痛感したのだ。

音数の少ないバラードでは、とくに歌声に聞き手の意識が集中する。ある種緊張感のある会場に放たれた歌声は凄まじかった。憂いを帯びるメロディ・歌詞に大黒柚姫の細く、綿飴のように繊細で儚い歌声がこれ以上ないほどにマッチングしたのだ。

そして、ハモリのパートでは相方のメンバーと目と目を合わせて確かめ合うように、そして一音一音丁寧に噛み締めるように歌っていたのが印象的だった。とくに、名古屋公演はこれが強かったように思う。

一番驚いたのは、ラストサビ前の「あの香りとともに花火がぱっと開く」の「開く」の高いトーンを丁寧に歌い上げるシーン。
持ち歌でもハイトーンで魅せるところはいくつかある。例えば、「Rocket Queen feat.MCU」の「秘密のデート」や、「HORIZON」のサビなどだ。しかし、これらは強く、芯のある歌い方であり柚姫もこれを意識しているのだろう。一方、プラネタリウムの「開く」は、とても正確で、しかし繊細で、そして美しいファルセットだった。
このパートは、原曲では花火が上がるSEがある。大黒柚姫の歌声は、この花火の華やかでありつつも儚い、そんなイメージを表現しているかのようだった。

今や持ち歌の中でも重要な役割を担う柚姫だが、今回のカバー曲でより彼女のポテンシャルを知ることができたと思っている。みんなが喜んでくれるから、という理由で自身の生誕祭でもアゲ曲を選ぶ彼女の新しいソロ曲はサンバのリズムの明るい楽曲だ。
しかし、彼女の魅力はそんな人懐っこく明るいところだけでなく、儚さを纏う繊細な歌声だ。これからも、彼女のポテンシャルを120%引き出す楽曲は折に触れて披露していってほしい。

 

TEAM SHACHIからの「愛してる」

東京公演2部のアンコールではウィンターソングの「sweet memories」が披露された。私はこの選曲に大きな意味があると感じている。
sweet memories」は、TEAM SHACHIのレパートリーの中では珍しい恋愛ソングだ。二人で過ごす時間の幸福さと、一人でいる時間の寂しさを歌う内容で、歌詞には切なさが漂う。アンコールらしくしんみり優しい気持ちになれる一曲だが、この歌詞を読み解くと、2021年を駆け抜けたTEAM SHACHIとタフ民のことを歌っているように思えるのだ。

特にこれを感じる箇所が次のパートだ。

きっと凍えるよな辛い日も 二人なら乗り越えられる
だって君が教えてくれたから
支え合って歩いてく強さを

本公演は、2021年を振り返るアンコールだと位置づけた。この前提に立つと、「凍えるよな辛い日」はこのコロナ禍だと考えることができる。
また、パシフィコ横浜のMCでは、タフ民の数々の応援に支えられてきたと涙ながらに語られた。
これらの理由から、「君」はタフ民ひとりひとりと解釈ができる。そして「私」はTEAM SHACHIとなるだろう。「君と私」の関係をそのまま「ファンと演者」に当てはめ、感謝の気持ちを伝える曲としたのだ。

そしてもう一つ印象に残ったパートがある。

こうして出会えたこと奇跡じゃない
神様がくれた運命さ
世界中で君を一番愛してる

これは、改名後は秋本帆華に割り当てられたパートだった。それが、今回は次のパート割に変わっていた。

こうして出会えたこと奇跡じゃない(坂本)
神様がくれた運命さ(咲良)
世界中で君を一番愛してる(大黒&秋本)

前述のとおり、この曲はTEAM SHACHIからタフ民へ愛を伝える曲という提に立つと、このパート割変更に大きな意味を感じずにはいられない。このパートは間違いなく、「sweet memories」のピークでありいちばん肝要なパートだ。これをメンバー全員で歌い紡ぐことで、タフ民への愛を表現したのだと私は受け取った。
愛してる、この言葉は単なる歌詞ではなく、紛れもなくTEAM SHACHIからタフ民へ向けたメッセージだ。ハルが担当したパートは、パシフィコ横浜で印象深かった「DREAMER」の「今初めて出会う景色の中 眩しい奇跡感じたなら」のパートとも通ずるメッセージがある。

そして、歌詞はこう続く。

ずっと君の隣にいるから
肩を寄せ合う私たちの
この絆は時を超えて永遠になる

このコロナ禍を通して、苦しい思いをしながらもお互いに支えあってきた。この絆は永遠だと言った。これがタフ民全員への私信なのである。感情が爆発したのはわたしだけだろうか。

そして、「TEAM SHACHIは誰も置いていかない」。「ずっと君の隣にいるから」そう優しく語りかけてくれたこの曲を、チケットソールドアウト、音漏れ配信ありのより多くの人に伝わる環境が整った2部にセットしたことがそれを証明している。

正直、sweet memoriesがこんなにタフ民とTEAM SHACHIの関係性をぴったり表す曲になると思っていなかった。彼女らが持つ多彩な曲たちは、こうしてたくさんの意味を持たされ、より鮮やかに彩られていくのだろう。

 

まとめ

オタクも演者も、苦しい思いをすることが多かったこのコロナ禍、エンタメがいかに私の心を保ってきたか、彩ってきたかを痛感した。
そして、演者も同じ気持ちなのだと実感する機会にもなった。

あとすこしすれば2022年の幕があく。新たな変異株のニュースを聞きながら、セッティングされたライブが無事に開催できるように心から祈っている。

私は、彼女たちが猪突猛進していく姿を必死になって追いかけたい。その先に必ず夢が叶うということを知っているから。

この確信を持てた2021年だった。いい一年だったな。おつかれさまでした、良いお年を。ありがとう。