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「私たちは、舞台の上でならどこまでも行ける」――ももいろクローバーZ主演・映画「幕が上がる」

突如、自身のUstreamチャンネルで発表された、ももいろクローバーZの映画への出演。

しかもちょい役ではなく、「主演:ももいろクローバーZ」。

驚いたし、うれしかった。ファンだから。と同時に、大丈夫か?とも思った。

今までももクロちゃんは何回か演技に挑戦しているけれど、まあ平たく言って上手ではない。アイドル映画なんてコケるに決まっている。ファンしか見ない。まあ、儲かればそれでもいいんだけれど、個人的にはそれだったらライブに行きたいと思うし、映画なんだからちゃんとやってほしいなと思う。今回は原作付きなので、半端なものを作ったら原作者にも失礼にもなる。

 

原作は演劇界で有名な平田オリザの「幕が上がる」。

弱小校の演劇部が全国大会を目指すというよくある話ではあるものの、少しだけだけど舞台に立ったことのある身としてはもっと早く読んでおけばよかったなぁとか、また舞台に立ちたいなと思うような素晴らしい作品だった。

 

わたしは情報解禁以降、原作を読んだり、劇中劇として登場する「銀河鉄道の夜」を読んだり、さまざまに公開されていく映像を見たり、そしてここ一週間は映画のプロモーションでテレビに出まくるももクロちゃんを追いかけたり、いつしか当初抱えていた不安は消え、平たく言ってとっても楽しみにしていた。

だって、こんなの見せられたら楽しみにならないわけがない。


映画『幕が上がる』劇中劇とその稽古 銀河鉄道の夜 1 - YouTube


ももいろクローバーZの青春映画!『幕が上がる』予告編 - YouTube

 

ももクロちゃんって、演技が上手でもないし、格別きれいなわけでもない。でもそれが舞台に立って、カメラの前で演技をして、こんなに魅力的になるなんてほんとうにわくわくした。

「私たちは、舞台の上でならどこまでも行ける」、この台詞ほんとうに最高すぎる。

 

とにかく今日、嫌で嫌で仕方なかった飲み会を途中で逃げ出して見てきた。どうしても公開当日に観たかった。そこはファン心理というもの。

17時半からの回で、あしたは映画の日で安いからか、スクリーンには30人ほどが集まっていた程度でかなり空いていた。まあファンしか見ないだろうから仕方ないとは思う。グッズは一部売り切れていたようだから、お昼の回で観た人が多かったのだろう。

以下に綴る感想は、映画に詳しいわけでもない一介のももクロのファンが、個人的な見解によって書き散らかす妄想のようなものです。話半分くらいでお読みいただけると、たいへんにうれしい。

 

端的に言えば、「惜しいと思ってしまった」。それに尽きる。

演技に関しては、役柄とももクロちゃん自身のキャラクターがうまくシンクロするようにキャスティングや脚本を工夫していることもあって、なんの違和感もなく観られることができた。映画として最後まで観てしまうことが出来た。

部長であり演出を担当する高橋さおりを演じる百田夏菜子は、なりゆきでリーダーを任された過去や現在リーダーとしてチームを率いているところが、上級生が引退してから流れで部長を任されてしまったところや部長というポジション、演出家としてのカリスマ性とシンクロする。

強豪校からのクールな転校生、中西悦子を演じる有安杏果は、グループ内で飛び抜けたダンスと歌のスキルを持っていること、オリジナルメンバーではなく途中加入であるためメンバーと壁を作っていた過去が中西さんのポジションとかなり重複する。

看板女優のユッコ(橋爪裕子)役を演じる玉井詩織は、ユッコと同じく華があり、且つ中西さんに嫉妬するユッコのように、夏菜子が他のメンバーと仲良くしていると嫉妬する。

部内のムードメーカであるがるる(西条美紀)は、その天真爛漫さやおどけた態度、おかしな行動が演じる高城れにそのもので、原作を読んでいた段階ですらあーれにちゃんだ!ただのれにちゃんだ!と笑ってしまったほど。おそろしいくらいにシンクロしていた。

そして後輩の明美ちゃん(加藤明美)を演じる佐々木彩夏は、自身もももクロの中では最年少であり、明美ちゃんのようにしっかりもの。今回、出番が少ないのが残念だった。

こういったかたちで、役と演者の経験やキャラクターを重ねるようにキャスティングをして演技をしやすくしてあげる、さらに言えば演じやすいように脚本や設定をいじる。それは作中(原作にしかでていないので原作を読んで欲しい)でさおりがやっていた演出方法そのもので、原作と現実のももクロちゃんがクロスする部分もみられる。

もちろん、役者本人のキャラクターのままでは演技ではなくなってしまうので意味がない。演技しやすく、且つきちんと演技ができるようになっていたし、きちんと演じられていた。

たとえば、いつもニコニコウヒョウヒョしていてえくぼを仕舞えない夏菜子はひとたびさおりになると悩んだり、迷ったりとシリアスな表情を見せる。あれは確実に百田夏菜子ではなく、高橋さおりだった。ほかのメンバーもそうで、自然に物語に入っていける。特に、劇中でジョバンニを演じるしおりんはわたし好みのジョバンニで、あぁもっと劇中劇を観ていたいなぁとおもうくらい。

それだけ、演技に関して期待していた以上のクオリティがあった。だから舞台もなんとしてでも見に行きたい。

 

ただ、監督と肌が合わないのか、脚本と肌が合わないのか、違和感を感じるところは多々あった。

一番きになったのがメタ的な、モノノフが見てクスッと笑えるようなネタと挿入歌。ちょっとならいいんだけど、多すぎる。若干しつこい。

大道具をのペンキを塗りながら話をする中西さんとユッコのシーンや、さおりのベッドに潜り込んでくるユッコは物語に馴染んでいるし、とても好印象を持った。話のなかに無理がないからだろう。

ただ、画面の端っこでやられるとめちゃめちゃ気になってしまってクスっとどころじゃなくなるししつこい、という部分もあって、特に感じたのが三宅アナウンサーがこれみよがしにタオルをたたんでいたり、ももクロのTシャツを持っていたりするところ。他にもメタ的な部分はたくさんあって、たこやきレインボーのメンバーが出てきたりもする。中西さんが滑舌が・・・と言い始めるのはかなり設定と矛盾して無理があった。女優にとって滑舌は致命的だし、滑舌が悪かったら強豪校でエースなんて張れない。まあ本当の転校の理由は違ったけれどそんな冗談が出ることがおかしいしそれになんのツッコミもしない高橋さんもおかしく感じてしまった。たぶん、面白いと感じる人のほうが多いんでしょうけど、わたしはしつこいな、あざといな、とおもってしまった。

それと、chaimaxxZEROが流れ始めた時は突然どうした?という印象を受けたし、走れは入れたかっただけだろ?とも思った。青春賦だけのほうがまとまりがあったのでは?と。

 

もう一つは、結局なにが伝えたかったんだろう、という印象がなくもないということ。原作では、飾らない等身大の高校生を描き切ることに主軸を置かれていたように感じる。ものすっっっごい頑張っているわけでもないし、でもやれるならちゃんとやりたいし、演劇はたのしいし、でもそれは自分にとって特別なことではなく日常の生活。それを外から観た時に「青春」っていわれるんだろうね、的な。

映画はどうだったんだろうな、とおもった時に、折角アイドル映画としてすっごいよく出来てるなとおもったのに、ドラマ的な部分で結局屋台骨はどこだったんだろう、というふうに疑問におもってしまった。全国行こう、っていうのはわかったけど、いまいち弱い。キャラクターの気持ちの変化や掘り下げが、もっとできたんじゃないか?という疑問が少し湧いてしまった。

話の流れが唐突に変わってえ?って置いてけぼりを食らうような感覚に陥るところもあった。中西さんが駅のホームでさおりと話すシーンで、突然でも一人ぼっちなんだよ、って語るシーンなんかはとくにえ、中西さんいきなり何言ってるの?宇宙とか話飛躍し過ぎじゃない?銀河鉄道の伏線にしてもアレだよ?と心のなかでツッコミを入れてしまった。

「惜しい」とおもってしまったというのはまあ要はそういうところ。

 

アイドル映画としてみるなら、十二分に素晴らしい出来だったと思う。ももクロちゃん全員の魅力も引き出せていたし、アイドルに演技をやらせるというドキュメンタリーとして見ても面白い。

でも、あまりに出来がよすぎて、普通の映画としてみた時にもっとやれるんじゃないかと思ってしまった。

なんかすごい偉そうだけれども。

 

この流れで、エンディングについて言及したい。

ラストシーンは県大会。吉岡先生との別れを経て、地区大会と同じように仕込みをして、役者・スタッフがスタンバイをする。緞帳が上がるカウントがはじまり、舞台から客席を見るアングルで、緞帳が上がっていく。緞帳が上がり切ると「幕が上がる」のタイトルロゴ。そして「走れ!」が流れる。

 


美術室 ver. - YouTube

 正直、椅子から転げ落ちそうになった。悪い意味で。あまりにミスマッチ。使いたかっただけだろマジで。走れ!に乗せて流れるのはエンドロールとメンバーとキャストのオフショット。アイドル色出しすぎ。せっかくジーンときてたのに台無しになりかねないぞ、これ。私がモノノフだったからいいものの。

 

でも、だからこそはっとしたことがある。

この映画はストーリーの順番通りに撮影をしているらしい。だから、役者の成長とキャラクターの成長がシンクロする効果があるのだという。終盤にもなっていれば、銀幕に映しだされているのは女優・ももクロ。もうわたしは普通に映画をみている心持ち。だから、走れ!のイントロがかかった瞬間にはっと現実に一気に引き戻された。しガクッときた。今私、ももクロちゃんがアイドルだってこと忘れかけてなかったか?エンドロールで流れるオフショットが、その気持に余計に拍車をかける。ももクロちゃんかわいいねえかわいいねえとアイドル映画を見ている自分だったら、走れ!が流れてもこんなにガクッとこなかったのだとおもう。いつのまにか、アイドル映画を見ている自分が、普通に映画作品として「幕が上がる」をみている自分になっていたのだ。

だから、折角余韻にひたっていたかったのに、なんだかぶち壊しにされたような気分でもあり、ももクロちゃんの「変化」に感動してしまったり。すごく不思議な気分だった。

そしてそれを引きずったまま、今パソコンに向かってぽちぽち文章を打っている。

 

結局、いろいろ思ったことを書いたけれど、この映画について総合的にどう評価したらいいのか、よくわからないというのが本音なのかもしれない。

少なくとも退屈はしなかったし、面白かった。ファン以外が観て面白いと感じるかどうかはわたしはファン以外の人間ではないのでわりません。色眼鏡はどうやっても外せない。

とりあえず今言えるのは、もう一度じっくり観たいな、と思っているということ。

さおりの、作中での大切で印象的な台詞「私たちは、舞台の上でならどこまでも行ける」という台詞、それが映画終盤でのさおりたちを象徴しているようであり、これからのももクロを象徴しているようにも聞こえました。それだけ、彼女たちに可能性を感じる作品です。

 

以上、ファン目線からの感想です。

この作品を、ファンではない人が見た時にどう感じるのか大変興味深いなとおもいます。

ぜひ騙されたと思って映画館に足を運んでみてください。そして、感想をおしえてください。


どーしても今日見て今日中に感想をあげたくて、とっちらかった文章になりました。お粗末さまです。

(※2015.3.1 すこし加筆しました。)