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光り輝く10年の軌跡 TEAM SHACHI 猪突猛進!猛進!猛進!猛進!ツアー名古屋公演レポート

2022年4月9日、10日。TEAM SHACHIは愛知県日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて、10周年を記念した公演が行われた。
データを半分以上失うという憂き目に遭いながらも、このライブを通して感じたことを記録する。

(本来全曲レビューがあったが、途中ですべてのデータが飛んだ。復元を試みるものの、困難だったため残ったものを供養するとともに記憶の放流としてアップロードします。)

 

総括

素晴らしいライブだったと思う。
かつてライブの始まりを告げていBlur「song2」が流れた瞬間、私はこれまで見てきた様々なライブへの期待の気持ちが蘇り、体に沸き上がるのを感じた。間違いなく、このライブはとてつもないものになる、そう確信を持ったのだ。
そしてカチ、カチ、カチと時計の針の音が会場に響き、「人間50年、アイドル5年」と謳われる。かつてのチームしゃちほこのライブの始まりだった。
路上デビューにまつわる曲として印象深い「ごぶれい!しゃちほこでらックス」から始まり、「ピザです!」や「トリプルセブン」「そこそこプレミアム」など、怒涛の勢いでスターダムを駆け上がっていた頃の雰囲気を放出しつつ、「首都移転計画」「愛の地球祭」「いいくらし」のEDM調のメジャーデビュー直後のシングルM1を集めた通称「ヘンテコリン3部作」をメドレーで披露するなどメジャーデビュー直後の空気をしっかり引き出していた。
また、中盤の「ULTRA超MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」、「パレードは夜空を翔ける」、「colors」の流れは結成5周年の「VICTORY YEAR」を連想するものであったように思う。
更には、「DREAMER」(1日目)、「ROSE FIGHTERS」(2日目)、「HORIZON」、「番狂わせてGODDESS」と改名後の印象深いシーンも忘れない。
この流れの中で、中盤降はブラス民、バンド民と順次合流し、一つ一つギアをあげていく姿は、パフォーマンスを研ぎ澄ませていった改名後のライブの変化を象徴しているようにも感じる。
アンコールでは、持ち歌が少なかった頃に披露していた「ダイビング」(1日目)、「最強パレパレード」(2日目)に続き、かつてのアンコール定番曲「マジ感謝」(1日目)、「でらディスコ」(2日目)を披露し、改めてこの10年の長い歴史を感じさせるものとなっていた。

過去を振り返る公演である一方で、決して新規を置いてけぼりにすることのない構成であった、と私は思っている。
セットリストを俯瞰してわかることがだが、ほぼチームしゃちほこ時代の楽曲である一方、改名後未披露の曲はかなり少なかったように感じる。「ULTRA超MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」や、「抱きしめてアンセム」「パレードは夜空を翔ける」「JUMP MAN」は改名後も積極的に披露されてきた。
「乙女受験戦争」「恋人はスナイパー」は、「浅野EP」で再録・リアレンジverがリリースされている楽曲であり、TEAM SHACHI楽曲でもあると言えるだろう。
また、「首都移転計画」「Cherie!」は本公演も含まれる「猪突猛進!猛進!猛進!猛進!ツアー」でも披露されており、耳に馴染んだ新規も多かったことだろう。
どの楽曲も思い出深いものでありながら、懐古趣味だけにならないこのバランス感覚の素晴らしさが、多くのタフ民を満足させる公演にもつながったのだと思う。
このホスピタリティ、最高である。


時空を翔ける楽曲たち

2016年から2018年を旅したcolors

「僕達の色々」と、咲良菜緒が歌い始めたときに鳥肌が立った。続いて、坂本遥奈秋本帆華が歌い継ぎ、大黒柚姫が「鮮やかに塗りつぶすのさ」と歌いあげた。
間があった。なぜか、「お願いします、鳴ってください」と声が聞こえた気がした。
そしてイントロが流れ始めた。
2016年に行われた武道館公演「真夏のPOWER BALL」でのサプライズ披露と全く同じだったのだ。
当時、メンバーがどうしても披露したい楽曲があったのにセットリストにはなく、本編の最後で「音が鳴るかわからない」と言いながら歌いだしたそれと完全に一致していた。
メンバーがライブの制作に深く関わるきっかけとなった瞬間を2022年の4月に再現したのだ。
膝から崩れ落ちそうになりながら、ならばラストの「鮮やかに塗りつぶすのさ」は当時と同じく全員で歌うのだろうな、と思っていたが、大黒柚姫一人が歌い上げて終わった。あれ?と思っている中、すぐさま暗転し、メンバーひとりひとりが、メンバーカラーのスポットライトで照らされた。ここで私は理解した。様々な思いが巡るこの曲は、時空を超えているのだと。
メンバーカラーのスポットライトで照らす演出は、2018年を12月に行われた「全速前進 聖なる本編」での演出と全く同じだった。
2日目、この気づきを基に注意して見てみると、サビでは階段を使用して歌っていた。これは2016年11月、安藤ゆず卒業公演の「colors」の演出の再現であろう。

纏めると、2016年8月→2016年11月→2018年12月とチームしゃちほこからTEAMSHACHI双方を繋げた形となる。
印象的な演出が多く、エポックメイキングなシーンが多いcolorsだが、この演出たちを一つにまとめてしまった手腕に恐れ入る。
ファンの私が涙が止まらなくなってしまったのだから、当然私が知らないところまで知っているメンバーはよりグッと心に来るものがあっただろう。2日目、メンバーたちが目に涙を浮かべながらも美しい歌声を響かせているのを見て、10年の月日の長さを感じたのだった。

3回目のリスタートを象徴する「プロフェッショナル思春期」

「プロフェッショナル思春期」は「リスタート」の楽曲だと思っている。
同曲がリリースされたのは、2017年2月末、5周年イヤーの締めくくりとして「おわりとはじまり」というタイトルのアルバムに収録された。
5周年は結成当初から標榜してきた「人間50年、アイドル5年」の節目であり、誰もが一旦の区切りだと思ってきた頃だ。この5年目の終わり、1年目から目標としてきた日本ガイシホールで披露されたのが印象深い。
ここでは、新たな目標として「Road to ナゴヤドーム前矢田」、つまりナゴヤドーム公演を目指すことが発表された。アイドル5年に区切りをつけて、新たなスタートを切った瞬間だった。
また、「プロフェッショナル思春期」を印象深くパフォーマンスしたのが2019年の「かなたツアー」だ。時空をかける列車「かなた」をモチーフとした公演のラストで、ブラスアレンジが施された「プロフェッショナル思春期」を披露した。楽曲の最後には、ステージの上でメンバーが三つ指をついて礼をし、ブラスの音色が鳴り続ける中そのまま顔をあげずに緞帳が降りていった。そして、緞帳が降り切ってもブラスの音は鳴り止まない。これがなんとも「続いていくこと」を象徴させる一方、「祭りのあと」的な寂しさを思わせ、ドラマチックな演出だったことをよく覚えている。
当時はTEAMSHACHIとしての初めてのツアーであり、様々な演出を模索する期間だったと感じていて、これもまた新たな歩みを象徴するものだ、と感じた。

10周年記念公演では、アンコールの最後でこれまで所属してきたワーナーミュージック内のレーベルunBORDEを卒業し自主レーベルの立ち上げが発表された。
これもまた、新たな歩みと言えるだろう。「華やかなステージが鼓動で揺れて見えた」と、その歌詞のとおり、ステージは眩しく、華やかだった。「戦い続けるよ」「絶えずはじまり続けてる」、彼女たちはそれを体現していた。
そして、10周年という節目のライブの終盤で再出発の歌が歌われることが、どうしょうもなく嬉しかったのだ。
この曲の最後は、マイクを床に置き、深々と三つ指をついて礼をしたあと再びそのマイクを手に取り立ち上がり、高く掲げる。これがどうしようもなく彼女らの決意に見えて仕方がなかった。

 

圧倒的な「TEAM SHACHI」のライブ

ここまで思い出を振り返りながら公演を紐解いてみたが、全体を通して強く感じたのは「チームしゃちほこ」でもなく「TEAM SHACHI(シャチ)」でもなく、まぎれもなく「TEAM SHACHI(チームシャチ)」のライブだった、ということだ。
10年目の節目、まだ「シャチ」だった彼女らはパシフィコ横浜公演に向け「チームしゃちほことTEAM SHACHIの融合」を掲げてパフォーマンスを研ぎ澄ませてきた。
これを踏まえると、今回の公演は「チームしゃちほこ」に巻き戻る可能性があるものだった。実際、4人でパフォーマンスをした前半は「チームしゃちほこ」との頃に戻った感覚が強く、10周年・しゃちほこの日に鑑みれば、差支えのない、また嬉しいものであった。

一方で、ブラス民・バンド民が参加してからのパフォーマンスは一気に「TEAM SHACHI」になっていたと思う。
特に、「恋人はスナイパー」に対してこの印象を強く持った。同曲は、「ごぶれい!しゃちほこでらックス」と同じ路上デビューの曲であり、ともに同じシングルに両A面としてリリースされている。今回のライブでは、この2曲が強く対比されているように感じる。
「スナイパー」は、前述のとおり「浅野EP」に再録・リアレンジされ、今回はリアレンジバージョンでの披露だった。冒頭の秋本帆華の「見てー!」に重なるのは、ブラスの華やかな音色と、歪むギター、重厚なドラム、ベースの音色だ。
「チームしゃちほこ」を象徴した楽曲が、重厚なサウンドに支えられ見事に「TEAM SHACHI」の楽曲として生まれ変わっていた。
「スナイパー」は前半に持ってくるかと思っていたが、後半に据えたのは「TEAM SHACHI」の姿を示すためだったのかと膝を打った。この「スナイパー」以降、完全にTEAM SHACHIのライブに切り替わって行ったこと、このきっかけが「スナイパー」だったことが「TEAM SHACHIとチームしゃちほこの融合」を強く示している。

そして本編最後を飾ったのは最新曲の「Rainbow」であった。「Rainbow」はツアーの中で最後に完成した楽曲である。この一方で、チームしゃちほこ時代からリリースのタイミングを窺っていたものでもあることは、折に触れて語られている。
このライブが至るところはやはり最新のTEAM SHACHIであり、目の前にいるのはかつてチームしゃちほこだった、TEAM SHACHI(シャチ)だった彼女らだ。そしていまここにあることがどれだけかけがえのないことだろうか。

私は、いつでもチームしゃちほこ・TEAM SHACHIは「今が最高」だと思ってきた。10周年の節目で、それを証明するかのようなセットリスト・演出が組まれ、ステージの向こうと強く気持ちが結びついた感覚になった。
「いつもいつまでも I will there for you」この言葉をわたしは信じているし、私もそうありたいと思っている。