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ちんちこちんで味濃いめ――ライブナタリー「TEAM SHACHI」1部2部レポ

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5月16日、ライブナタリー主催「TEAM SHACHI」1部、2部に参加してきました。
今回はナタリーのスタッフであり、チームしゃちほこ古参でもある清本千尋さんと作り上げる特別なライブ。
1部は同郷のボーイズグループBOYS AND MENさんとの対バン、2部はTEAM SHACHI単独公演という構成。
詳細なレポートはナタリーさん綺麗にまとめてくださっているので、わたしは自身が感じたことを記録として残しておこうと思う。

【目次】

第1部「シャチにボイメン会いにおいで」

この発表を聞いたとき、私は小躍りしていた。
ずっと待っていた対バンだ。そしてお相手は同郷で何かと名古屋市絡みの仕事で一緒になってきたBOYS AND MENさん。
開催前からボイメンファミリーとタフ民の間で予習はこの曲を、ここを見てほしい、と対バンに向けて盛り上がる空気も楽しかった。
私は、ボイメンファミリーさんから教えてもらったメンバーカラーを、これは絶対見たい!と思っていた「BOYS AND MEN夜露四苦」のパート順にセットして、Zepp羽田に向かった。

開幕

ここに至るまでにボイメンファミリーとの交流もあったし、パフォーマンス映像を見る中でボイメンさんとシャチの親和性は高いと感じていた。
一方、不安がなかったわけではない。なにせ男性グループと女性グループだ。ファン層も違うし、乗り方も違うだろう。TEAM SHACHIが果たして受け入れてもらえるだろうか。
この不安が、開演と同時に一瞬で吹き飛んだ
開幕のブザーが鳴り、背後からのスポットライトで12人の影が浮かび上がる。横一列に並んだ中に、ぽつぽつと頭ふたつほど小さい影がある。TEAM SHACHIのメンバーだった。
そして流れる「抱きしめてアンセムのイントロ。ステージから聞こえる野太い叫び声。
対バンはボイメンさんとシャチのコラボから始まった。ステージの上はボイメンメンバー8名、シャチのメンバー4名、ブラス民6名の計18名で超満員、所狭しと暴れまわるど迫力。
いつもシャチメンからの気合いとパワーを受け取るこの曲だが、今日はそこにボイメンメンバーの「かましてくぞ」言わんばかりの気合がぶつかって、凄まじい熱量がそこにあった。
そしてタフ民がぶっ壊れているのはいつものことだが、周囲のボイメンファミリーを見ると楽しそうに踊ってくれている人もいた。
ああもう、これ楽しいやつ。曲終わりに息を切らせながら思った。

名古屋のお祭りお兄さんBOYS AND MENさんのパフォーマンス

初めてボイメンを見る人〜!と聞かれ、私は素直に手を上げた。
昔からボイメン兄さんにはお世話になっていたし、名古屋のイベントなどでは一緒になってきたことも知っている。でも、私はこの日、彼らを初めて見た。
そして、とにかく「ライブが上手い」と唸った。
私がライブを見るとき、パフォーマンスの生感、場の空気の作り方、会場の熱狂を重視していることが多い。
ボイメンさんは全てにおいて優れていて、積み上げてきた10年のキャリアは伊達じゃないと感じた。
パフォーマンスについてはもう言うことがない。大きくて迫力のある身体を全力で動かすダイナミックさ。低音が効いた歌声。とにかく迫力があった。女性アイドルの中でも小柄・比較的少人数のTEAM SHACHIを見慣れているとびっくりしてしまうくらいだし、ステージが狭く感じるほど縦横無尽に駆け回っていた
セットリスト組み方も素晴らしかった。1曲目につんくがトータルプロデュースした「どえりゃあJUMP」を持ってくるセンスの良さといったらない。
大人数ならではのフォーメーションダンスが冴える曲で、つんく曲にありがち(だと私は思っている)な千手観音を見たときに思わず興奮してしまった。
予習のために「どえりゃあJUMP」のMVを見たときは超濃厚な「ハロみ」にこれは生で見ないと帰れない!と思ったもので、もう一発目から心を掴まれてしまった。女性アイドルのオタクの一定数はハロプロっぽいものが好きな人間がいることを見越しての選曲ならば、まんまと策略にハマったというわけである。例にもれず、私もハロプロ的な文脈が好きだ。
その後繰り出される曲もすべてノリやすく、「周囲を巻き込むのがうまい」という前評判どおりだった。
特に、アニメタイアップ曲の「ニューチャレンジャー」「進化理論」は初見にも優しいわかりやすさ、振りコピのしやすさで見様見真似ながらも楽しませてもらった。
楽しみにしていた「BOYS AND MEN夜露四苦」では、小林豊が「シャチのみんな俺よりブスだけど大好きだよー!」と叫んだ時なぜかタフ民が沸いていたのには笑ってしまった。そしてやっぱり、勇飛さんかわいいなあ、という気持ちが湧き上がったのであった。
楽しかったことを挙げはじめたらきりがないのだが、初見にもわかりやすいお手本のようなセットリスト、あらん限りのパワーをぶつけるパフォーマンス、それらすべてが楽しかった。

「Oh Yeah」が刺さりまくった訳

ボイメンさんのパフォーマンスの最後に、「Oh Yeah」が披露され、これが非常に印象に残った。
これは、コロナ禍でボイメンさんが10周年を迎える中発表された曲だそうだ。
エンタメは、コロナ禍以降苦境に立たされ続けている、ということはステージに立つ誰かを応援する人間ならば、誰もが感じ取っていることだろう。
5月16日、Zepp HANEDAに集った、あるいは配信で見ていたボイメンファミリー・タフ民は各々考え抜いた末に、その選択をしたことは想像に難くない。
そんなコロナ禍でエンタメを追い続ける私に、「Oh Yeah」は刺さった。
パフォーマンス前のMCで、リーダーの水野さんが、「どうしてもこの場に置いていきたいメッセージがあります」と語った。これから披露される曲は、今、この場でパフォーマンスすることに大きな意味があると自身の口から説明してくれることで、曲の持つ良さがより強く感じ取れる素敵なMCだった。
彼らのあらん限りのパワーを浴び、そのパワーで満たされた身体に「絶対負けるな こんな世の中に」という歌詞が強く染み込む。
この曲は、歌詞だけでなく振り付けも印象的だった。サビで横に並んだメンバー同士が拳を合わせる振り付けがある。このとき拳同士は触れ合わない。
この拳と拳のあいだに、コロナ禍において強いられてきた様々な物理的距離が思い起こされ、しかしそれでも向き合う拳同士が、その物理的距離を凌駕する強い精神的な繋がりを象徴しているように感じた。
つまり、「離れていても気持ちは繋がっているよ」というメッセージがあるように感じられたのだ。
感銘を受けた理由はこれだけではない。私がこの曲を聴いた時に、並々ならぬ想いが込み上げてきたのは、TEAM SHACHIが励まされているような気がしたからだ。
TEAM SHACHIは、新型コロナウィルスの影響でロードマップをめちゃくちゃにされ続けている、という解説をすれば、私がこの曲を聴いた時の感情をわかっていただけるだろうか。
勝負のライブが何度も延期を余儀なくされ、無観客での実施のためにクラウドファンディングを行ったことがあった。リリースのタイミングと合わせていたライブが延期となり、ロードマップが狂ったことも1度ではない。
一度落ち込んだ集客を戻そうと藻掻く中、TEAM SHACHIはパフォーマンスの場を奪われ続け苦しい局面に立たされ続けた。どんなに私が、これを呪ってきたことか。
そんな心に、「絶対負けるな こんな世の中に」というストレートな歌詞と歌声がずんと響いたのだ。
TEAM SHACHIは、スローガンにあるように「タフ」がキーワードだ。
「Oh Yeah」の歌詞にあるように、こんなところで負けてはいられない。
希望の灯火を、絶やしてはいけない。
そう目を覚まさせるようなパフォーマンスだった。

首都を移転!?TEAM SHACHIの、誰もが驚くライブ

ボイメンさんのパフォーマンスの途中途中で、「この2組なら首都を移転できる」という言葉があった。
私は「つけてみそみそ」を連想するのだが、改名以降特別な日以外は「しゃちほこ」が歌詞にある曲はパフォーマンスされてこなかった。だから、この言葉を選んだのは単なる偶然であって伏線だとは考えなかった。
「伏せ!」
いやそのまさかとは思わなかった。秋本帆華は、イントロの口上でこう言った。
「まあ一本まあ一本と、大概にしとかなかんよ。今晩のおかずがわやになってまう。ボイメンさんもいかんわ、ライブうますぎるもん!
この部分が言いたかったがためにあるような選曲。本来は、「しゃちほこさんもいかんわ」なのだが、この場で今パフォーマンスする曲はこれ以外ないと叩きつけるような1曲目。
「しゃち?ほこ?どこ?ここ!」で締めくくり、私たちはここにいると堂々と示しているように感じた。
タフ民すら驚く選曲を対バンでぶちかましてくる、ああ、これがTEAM SHACHIだ。
耳に残るフレーズでいままで沢山の新規を獲得してきた「首都移転計画」、ボイメンさんの素晴らしいパスでより輝いたし、ボイメンファミリーを驚かすことができていたとしたら、嬉しいなあと思う。そして身内すら驚かせていく、これが彼女たちの姿勢だ。
カバー曲として披露された「進化理論」は女性ボーカル、ブラスアレンジが加わりTEAM SHACHIらしい「色」が添えられていて、ボイメンさんのパートで披露されたそれとはまた違ったものが見られたと思う。なにしろ「ガンガンズダンダン」が楽しい。
Rocket Queen feat.MCU」では、ボイメンのタムタムこと田村さんがロックマンに扮して見事なスライディングで乱入する一面も。楽しそうに振り回していたロックバスターはカプコンさん全面協力だそうだ。客席にロックバスターを何発も撃ちこんだ時、ボイメンファミリーもタフ民もリアクションをしていたのを見て徐々に観客が一つになっていったのを感じ取れた。
「首都移転計画」だけではなく、「乙女受験戦争」にも驚いた。TEAM SHACHIのライブはとにかく盛り上がって楽しむのが一つのウリであることをメンバーから説明されたあと、ストレートなロックチューン「START」、TEAM SHACHIの楽曲性を詰め込んだ「AWAKE」と繰り出したその次が「乙女受験戦争」だ。
この曲もまた特別な時以外は封印されてきた曲で、「セット!」の一言で目玉が飛び出るほど驚いて硬直しそうになる一方、体は無意識に踊っていた。沸きまくるタフ民にボイメンファミリーがついてきてくれるのか、と踊りながら一抹の不安に駆られたが、サビは簡単な振り付けだったからかかなりの人が真似していてくれたように思う。
タフ民の盛り上がりを簡単に体感できつつ、サビの振り付けは簡単なのでそこに混ざっていける一曲だったと思う。この曲をセットリストに組み込んだ判断に、拍手を送りたい。

総括

ボイメンのパワーに圧倒され、TEAM SHACHIの予想を裏切る攻めの姿勢に驚かされ、最終的に超楽しい!となる良い対バンだった。
アンコールで披露された帆をあげろ、フリコピが楽しすぎて予習の段階から好きだったので素直に湧いてしまったし、間奏のセリフのパートでは秋本帆華咲良菜緒を担ぎ、咲良菜緒が「漢」を語る一面があった。大事なパートをシャチメンバーに任せてくれたことに、ボイメン兄さんの懐の深さを見た気がする。
ボイメンファミリー、タフ民双方がみんなで踊って楽しめる場の空気も楽しかったし、また見たいコラボだなあ、なんて思うのであった。
早く首都移転して、その記念としてこの二組でライブをしてほしい。

第二部「ARE YOU READY FOR THE FUTURE?」

TEAM SHACHIの新たな可能性

総括的な感想を簡潔に言うと、驚きと新鮮さと懐かしさに同時に襲われる新しい体験だった。
今回、対バンを含め改名後は特別な時以外封印してきた、歌詞に「しゃちほこ」を含む楽曲が披露された。私はそれに非常に驚いたし、1曲だけではなく複数曲セットリストに組み込まれているのが衝撃的だった。
衣装もメンバーカラーを全面に押し出し、スカート丈は膝上で中にはパニエが仕込まれているキュートなもの。改名後は「子供っぽいから」という理由でキュートな衣装を避けてきただけにこれにも驚いた。
しかし、単なる「しゃちほこ」懐古ではなく、セットリスト全体を見ると新旧のバランスが非常に良いものとなっていたと感じる。
その中でも、「HOEY」から「colors」への繋ぎ、「恋人はスナイパー」「抱きしめてアンセム」「ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」としゃちほこ時代の数々のライブを思い出すようなアゲ曲の連発の末の「AWAKE」には、課題として挙げられていた「チームしゃちほことTEAM SHACHIの融合」を目指さんとしていることが伝わってきた。
私はこれまでチームしゃちほことTEAM SHACHIは地続きである、という持論を展開してきたが、「しゃちほこ」であったことは事実なので無理に歌詞を変える必要もなく、避ける理由もあまりないと思っていただけに、今回の解禁は非常に嬉しいな、と素直に思った。
しゃちほこ時代の名曲は数々あるので、これからも降りに触れて新旧混ぜながら披露していってほしいな、と思う。
いいライブだった、というのは間違いなく、翌日の激しい筋肉痛がそれを証明することになって苦しんだのは余談だが、そこそこ重要な事実なのでここに書いておく。

改めて考える、「約束の歌」としての「Today」

二部アンコールのラストは、「Today」で締めくくられた。
セットリストの傾向から「でらディスコ」で締める可能性があると思ったが、「Today」で締めくくることに意義を感じたのは私だけだろうか。
「Today」の初披露は2019年2月、まだ本格的に新型コロナウィルスが感染が拡大する前で、オールスタンディングで声を出すことができた時だ。このまま何もなけれな、「Today」という曲が持つ意味合いは今と大きく変わっていただろう、と思う。
この曲について、スタッフからは会場みんなでシンガロングしていくような曲があったらいいという思いで作られたと語られている。
しかし、今演者とオーディエンスが一体となってシンガロングできる会場は、新型コロナウィルスの感染拡大が始まって一年経つが、どこを探しても存在しない。
それでもこの歌が歌われ続けるのは、いつしかこの歌をシンガロングするまで歌い続けるという意思表示のように私には感じられるし、オーディエンスの目線から見れば、これを会場で合唱できる日まではついていきたいと思ってしまう。
そして、その日までエンタメが生き延びてほしいという願いが生まれたとき、1部でBOYS AND MENさんが歌った「Oh Yeah」を思い出すのだ。
絶対負けるな こんな世の中に」。
このエールに、「なりたい自分になれないひとはいない」と、胸を張って言えるような気がした。
会場揃ってシンガロングできるようになるまで、この歌は歌われ続けるだろう。
「Today」は、観客のシンガロンがあって初めて完成する曲だ、みんなでこの曲を作り上げていきたい、と、初披露時に語られたことを思い出す。
私は、完成した「Today」が聴ける未来を、待ちわびている。