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それは女神か仏か――ライブナタリー「起こせアクション!nobodyknows+さんとレペゼン052❤️」レポ


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ライブナタリーは、ナタリーが主催するライブイベントである。

TEAM SHACHIは、昨年5月にBOYS AND MENとの対バンイベントでタッグしてから2回目のコラボレーションである。今回は「起こせアクション!nobodyknows+さんとレペゼン052❤️」と題し、TEAM SHACHIと同じく名古屋にスタジオを構えるnobodyknows+をゲストに迎え、熱いライブを繰り広げた。

本稿では、TEAM SHACHI・nobodyknows+双方のライブの感想を簡単にまとめるとともに、初披露となったTEAM SHACHIの新曲「舞頂破」について自分なりの分析・これからの期待について書きたいと思う。

 

目次

 

side TEAM SHACHI

TEAM SHACHIは、4月のツアーファイナル以降主戦場をフェス・対バンイベントに移し活動してきた。

今回のライブは全編通しで2時間30分の大ボリューム。途中nobodyknows+のパフォーマンスがあるもののこのボリュームのライブは久しぶりとなる。加えて、フェスや対バンでは帯同しないブラス民が久々の参戦、新レーベル一発目の新曲の初披露もあった。

結論、久々の熱いライブで筋肉痛になるほど踊り狂ったし、Tシャツがびっちょり濡れるほどに汗をかいた。これこそ、TEAM SHACHIのライブだ。

ライブは「ROSE FIGHTERS」から始まり、「こだま」「BURNING FESTIVAL」と定番曲かつブラスの映える曲で「TEAM SHACHI」はどんなグループかを示した。

この一方で、「眠れないナイNIGHT!」や「でらディスコ」など、クラブサウンド寄りの楽曲を組み込むなど対バン相手を意識した選曲も見られた。「いけいけハリウッド」は、nobodyknows+のスタジオでレコーディングしたという縁もあり、セットリストに加えたのだという。
前半は比較的攻めの楽曲を選んでいたように思う。一方、後半は「よろしく人類」「You!」「Rainbow」等アイドルらしい楽曲も盛り込まれ、ぞんぶんにTEAM SHACHIらしさを見せられたのではないだろうか。

トリックスター的に「Kissy-麺」が改名後初披露されたことも、特筆すべき点だろう。私はこの楽曲の洒落が聞いた歌詞やすっとぼけたサウンドが大好きで今か今かと披露を待ちわびていた。まさか対バンで披露されるとは思わなかったが、久しぶりに回収ができて沸いたのは事実だ。(「いただきっニッポン!~おみそれしましたなごやめし~」といい、名古屋めし絡みのニッチな楽曲が対バンでぽつんと披露されるのは、永遠のミステリーだと思っているのは内緒にしたほうがよいだろうか)

全体を総括すれば、パフォーマンス量も含めてTEAM SHACHIのライブをしっかりと味わえるそんなライブに仕上がっていたと感じる。

また、nobodyknows+のパートを含め、今回は照明演出が印象的だった。演者の背後にあるLED照明がとにかく美しい。激しい楽曲では赤いフラッシュライトが激しく点滅したと思えば、「Rainbow」では虹色に輝いていた。
これがライブをより引き立てたのは言うまでもない。
特に印象深いのがTEAM SHACHIとnobodyknows+のコラボパフォーマンス「ココロオドル」の演出だ。TEAM SHACHIのパフォーマンスが全て終わり、最後にとnobodyknows+のメンバーを呼び込むと、それぞれのメンバーが所狭しとステージ上を走り回った。このライブの大団円だ。
最後の最後で「呼応する心響き続ける」と高らかに歌われた瞬間に会場すべての照明が明るくついた。このカタルシスといったらない。
同じ明るさで照らされたステージと客席を見た瞬間、ああ誰もかれもが一つになった時、ああココロがオドっていたのだ、と実感したのだ。これが良すぎて、その後の余韻がいつまでも続いた。

過去にも別のライブで似た演出を経験しているのだが、まるで夢から覚めてしまったような、そしてまだ夢心地のような不思議な気持ちになる。「終わってほしくないと願いながら大団円で終わること」がこんなにも美しく尊くいものなのだ、と改めて感じた。

退場の影アナが入ってなお鳴り止まない手拍子を鳴らしながら、客席みんなと同じ気持ちを味わった気がしている。

 

side nobodyknows+

さすがベテラン、圧巻のライブパフォーマンス。7曲のパフォーマンスだったにも関わらず、満足感が凄まじい。

ライブは「Hero's Come Back!!」のコラボパフォーマンスから始まり、9割がタフ民だったフロアをちんちこちんに盛り上げた。

どれほど盛り上がったかというと、タフ民は思い思いに腕を上げ、跳ね、踊り、nobodyknows+の単独ライブ?と疑いたくなるほど。

私を含め、nobodyknows+が世代というタフ民も多かったと思うが、もとより音楽に合わせて体を動かすのが(もっと言えば踊るのが)好きなタフ民とノリの良いヒップホップの相性はいいのかもしれない。

更に驚いたのは、ほとんど初めて聞く曲だったというタフ民が多くいたことだ。にも関わらず、あんなに盛り上がることができたのはnobodyknows+の実力以外の何物でもないだろう。踊り狂うタフ民を見て、ノリ・ダ・ファンキーシビレサスは「タフ民はみんな優しい」とコメントをしてくれた。実際、普段はコピー(ステージと向かって逆向きに振り付けを真似すること)のタフ民も、相手に合わせてミラー(ステージと向かって同じ方向に振りを真似すること)で振りの向きが揃っていったのも一体感があった。

タフ民からすれば、乗りやすい曲をかけてくれて、好きな乗り方でいいと煽ってくれて、また更に「君らの持ってるその光るやつ振ってくれ!」とアイドルオタクの応援スタイルにリスペクトを見せてくれるnobodyknows+が優しいんだよ、と思う。その双方向のリスペクトが、フロアの一体感を産んだのだろう。

コラボパフォーマンスであった「Hero's Come Back!!」の盛り上がりだけでなく、心のコール&レスポンスで盛り上がった「ワサワサ」や、前述のとおりミラーできれいに揃った振りコピでペンライトの海を見せた「愛のテーマ」など、盛り上がるポイントが多く用意され、楽しかった記憶しかない。

nobodyknows+のパートでは、最大のキラーチューン「ココロオドル」をRemixバージョンで披露したのもライブのうまさだ、と思う。
前述のとおり、ライブの最後に全員で「ココロオドル」をコラボパフォーマンスを行なっている。だからこそ、nobodyknows+単独のパフォーマンスとして見られて良かったと思う。ノリ方も予習になり、オーラスでの盛り上がりにも一役買っていた。
また、ここで「ココロオドル」を披露することで、予想している予定調和が揺らぎ、この先のライブの展開の予想が付きづらくなったとも感じている。だからこそ、ここで「ココロオドル」を披露した大きな意味があったように思う。

兎にも角にも、観客の乗せ方、ライブの組み立て方、パフォーマンスのクオリティ何をとっても素晴らしく、観客としても大きな学びとなったステージだった。

 

「舞頂破」の可能性

「舞頂破」は、ラウド・ポップ・ブラスの三本柱を今一度据え直す楽曲、そう解釈している。

「舞頂破」の考察に入る前に、これまでの楽曲を私なりに振り返ってみたい。TEAM SHACHI初期の楽曲は、どちらかといえば「ラウド」「ブラス」の2要素を押し出したものが多く、とくにシャチZERO以降暫くはその傾向が続いていたように思う。一方、「ポップ」は「ラウド」と混在することは少なく、楽曲群を俯瞰したとき点として存在することが多かったように感じる。雑駁に言えば、「ラウド・ブラス」あるいは「ポップ・ブラス」と二極化していたようなイメージがあるのだ。

わかりやすく1stミニアルバムを例に取ると、「DREAMER」「ROSE FIGHTERS」はわかりやすく「ラウド・ブラス」だが、「グラブジャムン」は「ポップ・ブラス」に寄ったもので、「ラウド・ポップ」が混ざり切る前の作品と言えるだろう。

要は、「ラウド・ポップ・ブラス」の三本柱が一つの楽曲に詰め込まれているものはまだまだ少ないのだ。「AWAKE」や「番狂わせてGODDEES」はこの三本柱がしっかり落とし込まれている楽曲だと思うが、まだまだその曲数は少ない。
「AWAKE」と「番狂わせてGODDEES」におけるラウド・ポップ・ブラスについては、坂本氏が詳細に論じているため、ここでは多くを語らずにおく。

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さて、ここに来て「舞頂破」は、キャッチーで激しい振り付け・「なんまいだーなんまいだー」という歌詞のエキセントリックさ・背後で轟音のように響くラウドなバンドサウンド・最後の最後で隠し玉のように出てくるブラス民と、とことん「ラウド・ポップ・ブラス」を研ぎ澄ました楽曲であるように感じた。

特に振り付けの激しさ・真似のしやすさは一級品。
サビでは「舞頂破!」と叫びながらヘッドバンキングがあるだけでなく、ヲタ芸のロマンス、歌舞伎の見得を切るポーズなど、思わず真似したくなるチームしゃちほこから続くTEAM SHACHIらしさが満載だ。それに加えて「なんまいだー」は、チームしゃちほこごく初期のトリッキーかつコミカルさを彷彿させる。

その一方で、サウンドはかなり重厚だ。メンバーが「咲良菜緒が好きそう」と語るように、メタルに片足突っ込んだか?と思うほど激しいバンドサウンドが背後で鳴る。坂本遥奈のラップパートはこの楽曲の大きな見せ所で、持ち前のスキルをさらに研ぎ澄ませている。

では、「ブラス」はどうだろうか。ブラス民はラストサビの一部の最後の最後、あたかも次の楽曲のためのファンファーレを吹き鳴らすかのように登場する。
そのため、「ラウド・ポップ」の二本が強調されるものとなっているように一見見える。しかし、私にはこれが「ラウド・ポップ・プラス」の三要素をより強固にするものに見えるのだ。

というのも、先に述べたようにTEAM SHACHIの楽曲群には、「ラウド」「ポップ」「ブラス」それぞれの要素が分離されて存在する楽曲もあれば、2つあるいは3つが混合した楽曲もある。その幅広さゆえに、ライブでの変幻自在さや楽曲の並べ方に意外性を持たせたり、驚きを与えたりすることができることは強みではある。

一方で、それらの要素を持つ楽曲群をテンポよくかつ流れを切らずにつなげるのは至難の業だ。特に、ごく初期の打ち込み音が目立つようなコミカルな楽曲と「ラウド・ブラス」の要素を持つ楽曲は相性が良いとは言いづらい。

そこで改めて「舞頂破」を見ると、振り付けやセリフ、「なんまいだー」等過去の楽曲の持つコミカルさを踏襲しつつも、楽曲はラウドに寄せていることを特徴として上げることができる。そしてその流れで最終的にホーンが吹き鳴らされるのだ。ここから、どんなしゃちほこ曲からでもTEAM SHACHI楽曲へときれいに繋がるでは、という期待が膨らんだ。

つまり、これからのライブで「ラウド・ポップ・ブラス」の要素を強め、「TEAM SHACHIとチームしゃちほこの融合」を深化させるために生まれた楽曲が「舞頂破」だと私は解釈した。

まだ話は終わらない。この楽曲に、「From Nagoya」の精神が隠れていることに、気づいているだろうか。
なぜ、「なんまいだー」なのか。なぜ、「合掌」や「座禅」のポーズが取り入れられているのか。なぜ、仏教なのか。

この答えは、愛知県はお寺の数が日本一多いからだ、と予想している。
味噌カツ手羽先、名古屋城テレビ塔など数ある名古屋要素を出し尽くしたその先が「なんまいだー」、ここに至ったか、と膝を打った。
ものすごく雑にまとめると、初のシングルであった「恋人はスナイパー」をTEAM SHACHIナイズすると、「舞頂破」が生まれるのだ、と思う。

だらだらと書いてしまったが、「舞頂破」は、「ラウド・ポップ・ブラスをフロム名古屋の精神で」がまた一つ形になった楽曲なのだ。これが自主レーベル一発目なのだから、これから先の楽曲群に期待が高まる。

ただし、たびたび登場する「虎ひしぎ」のポーズの謎は私の中で予想がついていない。古武術に存在するものらしく、このポーズをしたまま階段を上ると疲れない(秋本・談)、寝た状態で横キックができるようになる(坂本・談)など身体能力を向上させるものらしいが、これを語るとさらに長くなってしまうので、詳細は8/27に行われる新レーベルにかかわる発表の生配信を待ちたいと思う。

 

 

そのた、もろもろ

入りきらなかった色々をすくい上げるコーナー。読まなくて大丈夫。横道逸れまくり、真面目な考察はなし。

  • 最後につく客電の話は、実はこのブログに置いてあるレポに出てくる。もう7年も前だ。驚いた。
  • 何の曲か忘れたけど、ほのゆずきが下手でめっちゃいちゃいちゃしていて気が狂った。最初は柚姫がバックハグしつつほーちゃんの口元に自分のマイクを持っていくなどしていたのだが、最終的にほーちゃんが柚姫をおんぶしてた。やめろ。ころすきか。
  • 舞頂破で秋本帆華が「さあ、崇めよ」的なセリフを言っていたけど、乙女→女神→仏と転職激しくないか?とちょっと笑ってしまった。仏教要素なので、神ではないので…ほ、仏…次は天使かな、あ、もう天使か…
  • 「舞頂破」、「HORIZON」の要素も継承している気がする。おそらく、ハルちゃんのラップパートと秋本帆華のセリフが目立っているからそう感じるのだと思う。「AWAKE」感もあって、TEAM SHACHI2.0感がある。
  • ゴヤと寺について語ったが、これがまたタイムリーというか、自分のジャンルを超えたSS(すきなひとしかすきじゃない。決して誰でも大好きではない)ぶりを発揮したせいだ。
    この日は、nobodyknows+との対バン、「起こせレペゼン052」(※052は名古屋の市外局番)ということでnobodyknows+さんが楽曲提供していること、名古屋つながりでヒプノシスマイク*1のナゴヤディビジョン*2 Bad Ass TempleのTシャツを着ていった。
    Bad Ass Templeはその名のとおり僧侶をリーダーとするチームで、ナゴヤっぽいガラと治安の悪さを持つ一方絆の強いグループだ。なぜリーダーが僧侶かといえば、愛知県は日本一お寺が多いから、という知識があっただけに、「なんまいだー」と歌いだしたときはハ?と思った。紫*3だしナゴヤだし、まだ一回も着たことない*4し、ノーバディーさんが提供してるしよーしちんちこちんに沸かしたるがん!*5と洒落のつもりで着ていったら洒落にならなかった。笑った。

*1:音楽創作キャラクターラッププロジェクト。平たくいえばキャラクターのビジュアルに、声優さんが声をあててラップする。木村昴のめちゃうまいラップを聴けるコンテンツ。アニメもあるよ。

*2:各地にチームがある設定。最初は池袋、渋谷、新宿、横浜だけだったが、新グループとして名古屋と大阪が追加された。

*3:Bad Ass Templeのチームカラーは紫

*4:行くはずだったライブは中止になってグッズだけが家に届いた

*5:Bad Ass Templeの楽曲、「Bad Ass Temple Funky Sounds」にそういう歌詞がある。一番好き